非感染性内膜炎(Non-infective Endocarditis)
1. 定義
非感染性内膜炎(Non-infective Endocarditis、NIE)は、心臓の内膜に炎症が起こる疾患ですが、感染性原因によるものではありません。この疾患は、感染性内膜炎(感染性心内膜炎)とは異なり、細菌、ウイルス、真菌などの外部病原体の侵入によって起こるものではありません。代わりに、心臓の内膜や弁に炎症が起こる原因としては、血液凝固、免疫反応、またはその他の基礎疾患が関係しています。
非感染性内膜炎は、主に心臓弁に異常な血栓(血液の塊)が形成されたり、既存の心臓疾患で起こる炎症反応として現れる可能性があります。この疾患は感染性内膜炎に比べて比較的まれですが、深刻な合併症を引き起こす可能性があるため、正確な診断と治療が重要です。
2. 特徴
非感染性内膜炎は感染因子なしに発生する心臓内膜の炎症であり、主に血液凝固障害に関連した病理学的現象が特徴です。主な特徴は以下のとおりです。
- 血栓形成:血液の凝固過程が異常に行われ、心臓内膜に血栓が形成されます。この血栓は、しばしば弁に付着しているか、血管を閉塞させる可能性があります。
- 自己免疫疾患との関連:非感染性内膜炎は、しばしば自己免疫疾患と関連しており、ループスやその他の免疫関連疾患でよく発生する可能性があります。
- 心臓弁の問題:既存の心臓疾患や弁疾患がある場合、非感染性内膜炎が発生する可能性があります。
- 非感染性:この疾患は、感染性内膜炎とは異なり、外部病原体が原因ではなく、主に血液凝固異常や免疫反応の結果として現れます。
3. 原因
非感染性内膜炎の主な原因としては血液凝固の問題と自己免疫疾患があります。その他にも、特定の心臓疾患や血管疾患などが原因となる可能性があります。主な原因は以下のとおりです。
- 心臓弁の血栓:心臓内膜に血栓が形成される主な原因は心臓弁疾患です。弁に異常な血流が発生すると、血液が凝固して血栓が形成される可能性があります。このような血栓は、心臓内膜に炎症を引き起こす可能性があります。
- 抗リン脂質抗体症候群:抗リン脂質抗体症候群(antiphospholipid syndrome)は自己免疫疾患であり、血液が異常凝固する傾向を示します。この疾患は非感染性内膜炎の主要な原因の一つであり、特に心臓弁に血栓が形成される可能性があります。
- ループス:自己免疫疾患であるループスは、しばしば非感染性内膜炎を引き起こす可能性があります。ループス患者では、免疫系が自己組織を攻撃する反応が起こり、これにより心臓内膜に炎症が発生し、弁に血栓が形成される可能性があります。
- リウマチ性心臓病:リウマチ熱による心臓疾患は、非感染性内膜炎と関連している可能性があります。リウマチ性心臓病は心臓弁に損傷を与える可能性があり、それによって血栓が形成される可能性があります。
- 心臓疾患:既存の心臓疾患がある場合(例:心臓弁疾患、心臓不整脈など)、血栓が形成されたり、心臓内膜に炎症が発生する可能性があります。
- 悪性腫瘍:一部のがん患者で非感染性内膜炎が発生する可能性があり、腫瘍が血栓を形成したり、免疫反応を引き起こす可能性があります。
- 臓器移植および免疫抑制剤の使用:臓器移植を受けたり、免疫抑制剤を服用している場合、免疫系の異常な反応により非感染性内膜炎が発生する可能性があります。
4. 症状
非感染性内膜炎の症状は、感染性内膜炎に比べて比較的目立たない場合がありますが、それでも深刻な状態である可能性があります。主な症状は以下のとおりです。
- 発熱:非感染性内膜炎が進行すると、高熱が発生する可能性があります。しかし、感染がないため、発熱は感染性内膜炎よりも持続性がない可能性があります。
- 疲労と倦怠感:心臓機能の低下により、疲労感や倦怠感を覚える可能性があります。
- 心雑音:心臓弁の損傷により心雑音が発生する可能性があり、これは医師によって聴診で確認できます。
- 呼吸困難:心臓機能が低下することで、呼吸困難が発生する可能性があります。
- その他の合併症:血栓が心臓やその他の臓器に広がると、脳卒中、肺塞栓症、腎臓の損傷などの合併症が発生する可能性があります。
5. 治療と手術方法
非感染性内膜炎の治療は原因疾患の管理と血栓治療を中心に行われます。
- 抗凝固剤:非感染性内膜炎の主要な治療法は、抗凝固剤(例:ワルファリン、アスピリンなど)を使用することです。抗凝固剤は、血栓の成長を防ぎ、すでに形成された血栓を除去するのに役立ちます。
- 免疫抑制剤:自己免疫疾患による内膜炎では、免疫抑制剤(例:コルチコステロイド、免疫抑制剤など)を使用できます。これらの薬剤は免疫反応を調節して炎症を軽減します。
- 基礎疾患の治療:非感染性内膜炎の原因となる基礎疾患を治療することが重要です。例えば、ループスやリウマチ性心臓病を治療することで炎症を軽減できます。
- 心臓弁手術:心臓弁に深刻な損傷が発生した場合、弁を交換または修復する手術が必要になる可能性があります。
- 血栓除去手術:血栓が心臓内膜に形成され、血流を遮断したり、心臓機能を低下させたりする場合は、手術で血栓を除去する必要がある可能性があります。
6. 予後と管理方法
非感染性内膜炎の予後は、患者の基礎疾患と治療反応によって異なります。この疾患は適切に治療すれば、ほとんどの場合治癒可能ですが、合併症が発生すると予後が悪化する可能性があります。
- 基礎疾患の治療:基礎疾患(例:ループス、抗リン脂質抗体症候群など)がうまく管理されれば、予後は肯定的になる可能性があります。
- 合併症の発生:血栓が脳や肺などの他の臓器に広がる場合、合併症が発生する可能性があり、この場合、予後が悪化する可能性があります。
- 定期的な検査:血液凝固状態を定期的に検査して、適切な抗凝固剤を使用し、治療効果を確認します。
- 免疫調節:自己免疫疾患によって発生した内膜炎の場合、免疫抑制剤や免疫調節剤の使用によって管理します。
- 基礎疾患の管理:ループスや抗リン脂質抗体症候群などの基礎疾患がある場合は、それを徹底的に管理して内膜炎を予防します。
結論
非感染性内膜炎は、感染性内膜炎とは異なり、細菌やウイルスなどの病原体による感染ではなく、血液凝固、免疫反応などの原因で発生する疾患です。主な原因としては血液凝固障害と自己免疫疾患があり、適切な治療と管理によって予後を改善できます。血栓治療、免疫抑制剤の使用、心臓弁手術などが治療方法に含まれ、定期的な管理と基礎疾患の治療が重要です。
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